今回は実際に私も活用している成長株を見つけられる(and 非成長株を排除できる)MBA流フレームワークをご紹介します。
MBAとは、経営学修士(Master of Business Administration)のことで、戦略構築や事業分析などの知識を学術的に学ぶものになります。
という方にわかりやすく解説してます。早速みていきましょう!
この記事はこんな人向け
- どんな企業に投資をすればいいかわからない
- 人より一歩進んだ投資を行いたい
- 論理的に納得した上で投資先を決めたい
書かれていること
- 企業分析に使えるフレームワーク
- 業界分析の手法
- 投資先選定に活用できる独自の視点
読むと得られるメリット
失敗しにくい投資先選定方法が学べる
最終的な判断は自己責任でお願いします。株式投資は、さまざまなリスクを正しく認識したうえで、自分自身の判断と責任に基づいて行ってください。
執筆者情報
- 名前: おみくん
- 投資歴: 11年、損益レシオは2.57以上を維持。主にオニール流成長株投資を実践
- 学習量: 投資関連本200冊以上読破
- 資格・学位: 中小企業診断士(29歳で資格合格)、経営学修士(MBA、28歳で修了)、2級FP技能士
MBA流フレームワークは株式投資に活かせるの?
本来MBAなどで使われるフレームワークは、経営戦略や事業戦略の構築のために使われることが多いですが、ここでは逆手にとって将来伸びそうな企業を見つけるために使いたいと思います。
「しっかりと勝つための戦略が練られている企業は勝利への再現性が高い」という考え方です
フレームワークとは
フレームワークとは、物事を考えるための思考の枠組みのことを指します。対象の事柄について考えを巡らす際に一から考えると、考え漏れや同じことばかり言っていることが多々あります。
それを防ぐためにフレームワークを使っていきます。
これまで多数の有名教授やコンサルティングファームなどが状況に応じたフレームワークを開発・設計してきており、先人たちの知恵と努力が詰まっているものになります。
フレームワーク利用のメリット
- 素早く考える要点を抑えられる
- 多方面から検討ができるため抜け漏れが起きにくい
- 客観的に説明がしやすくなる
経営戦略上勝っていく企業を特定できる?
投資をするからには株価は上がって欲しいですよね?
企業の株価が上がるためには、みんな欲しいと思う株でなければ値段は上がりません。
では、どういう企業だとみんなが欲しいと思うのか?
様々な理由があるかと思いますが、一般的に「成長する」企業と「利益があがる」企業は欲しいと思いませんか?
企業が成長するためには、業界全体が成長する「成長産業」か、業界の中で「シェア」を伸ばすことができるか、どうかにかかっています。
同じく、利益を上げるためには、儲かるビジネスなのかという「業界全体の収益性」と利益を残せる「コスト体質」なのかが重要になってきます。
簡単に言うと、下記が大事な問いということになります。
- その業界伸びるの?おいしい業界なの?
- 業界の競争に勝てる企業なの?利益は残せる企業なの?
この記事では、①の点を「外部環境分析・業界分析」として、②の点を「内部環境分析・企業分析」として紹介していきたいと思います。
銘柄を決める際に全てのフレームワークを使う必要はないですが、知らない業界について分析する、最近知った企業への投資判断をするに際に活用してもらえると
ココに注意
フレームワークは便利な反面、分析をする意味を見失いがちなので、「本当にそうなのか?」「だから何が言えそうか?」「他に考えられることはないか?」という視点は持っておきましょう。
外部環境分析・業界分析8選
外部環境分析の最終目的は「伸びる業界か?」、「収益性のある業界か?」を探ることにあります。
分析が好きな方はさらに一歩進んで、「この業界で勝つためにはどんな要素が必要か?」を抽出できると勝つ企業が見つけやすくなります。
マクロ環境分析・PEST分析
マクロ環境分析は取り巻く外部環境の中で最も広範囲なものを対象に、現在もしくは将来的にどのような影響があるかを把握・予測するためのフレームワークです。
代表的な分析手法は、PEST分析と呼ばれるもので、 「政治(Politics)」「経済(Economy)」「社会(Society)」「技術(Technology)」という4つ視点から環境を紐解いていきます。
単に、事象の整理にならずに、そこから将来の予測を行い、どのような市場に政府のお金が流れる(国策)か?、機関投資家のお金が流れる先はどこか?を想像する必要があります。
一度この分析を行うと幅広い業界に活用できる点と高頻度に行う必要がない点がおすすめです。
機関投資家:大量の資金を使って株式や債券で運用を行う大口投資家。保険会社や年金機構、金融機関など
5F(5フォース)分析
5フォース分析は複雑な業界構造を単純に5つの力に分類して、収益構造や業界の状況を把握するフレームワークです。
5つの力は下記を指しており、それぞれのパワーバランスによって自業界の収益性が決まってきます
- 業界内での競争
- 新規参入の脅威
- 代替品の脅威
- 売り手(サプライヤー)の交渉力
- 買い手(顧客)の交渉力
収益性を下げる要因は3方向あります。それぞれ、売上単価を下げる方向、売上原価が上がる方向、販管費が上がる方向、に集約できます。
つまり、業界内での競争や業界への新規参入者、代替品の存在は、差別化ができない状況においては、いずれも売上単価・販売価格の低下を招きます。
売上原価が上がる方向とは、売り手(川上側)の交渉力が強い場合に仕入れ値が高い状態で仕入をするしかなく、売上原価が上がってしまう傾向にあります。
販管費が上がる方向とは、買い手(川下側)の交渉力が強い場合に、営業促進費用や広告宣伝費をたくさん使わないと売れない傾向を指します。
こちらも商材によって傾向が決まってくるので、一般的に業界全体で同じような販管費になることが多いです(1社だけ販管費が安く売れている会社があれば掘り出し企業です!)
川上産業・川下産業:原材料から最終消費者に届くまでの商流を川に例えており、原材料から最終消費者
サプライチェーン分析
原材料から最終消費者の手元に商品が届くまでの流れを、企業を超えて把握するフレームワークです。
1企業の中で価値を提供する流れを把握するバリューチェーン分析に似ていますが、サプライチェーン分析は一般的に産業全体を表すことが多いです。
川上から川下までの流れの中で、企業数や企業規模を把握していくと力関係が分かりやすくなります
バリューチェーン:企業の行動が最終的に付加価値にどう貢献しているかを分析する手法。価値連鎖を把握する
プロフィットプール分析
サプライチェーン分析をしたあとに、それぞれの業界の収益をプロットした図のことをプロフィットプール分析と呼びます。
これを見ると業界全体の売上とそこからもたらされる利益率を見ることができ、影響力の強い業界や収益性に乏しい業界を把握できます。
アドバンテージマトリックス
アドバンテージマトリックスとは、「競争要因(戦略変数)の多少」「優位性を構築する可能性の大小」という2つの軸で、世の中の業界を4つのタイプに分類するフレームワークです。
分かりにくいですが、要は競争優位性を構築するために「売上高の大きさ」以外に要素はあるか?を考えると分かりやすいです。
「売上高が高い企業は比例して収益性も高い」となると、売上高が競争優位性を構築する上で重要な概念となり得ます。
- 規模型事業:大きくなれば勝てる業界。自動車産業、半導体産業など
- 特化型事業:やり方によっては勝てる業界。レストラン、IT系企業など
- 分散型事業:規模が大きくなりにくい業界。アパレル業界、理髪店など
- 手詰まり型:小さいと勝てないが大きくても収益性が悪い業界。鉄鋼業界など
当てはまるタイプによって、今後消滅する可能性の高い企業やシェアを伸ばす企業が把握できます。
事業経済性分析
事業経済性分析は業界の特徴を端的に表すことができる非常に有益なフレームワークです。
基本的には、規模が大きくなる・たくさん繰り返す・使いまわしをするなどによって、コストを押し下げる方向に働く力のことを指します。
- 規模の経済性
- 範囲の経済性
- 習熟の経済性(経験曲線)
- 密度の経済性
- 稼働率の経済性
- ネットワークの経済性(ネットワーク効果)
ネットワークの経済性のみ、コストに対して働く力ではなく売上向上に寄与する力と言えます。
これは同じサービスを利用する人が増えれば増えるほどサービスの便益が加速度的に増す効果のことを言います。
業界ライフサイクル分析
業界ライフサイクルとは、業界自体が誕生してから衰退していくまでのフェーズを表したフレームワークです。
一般的にどんなビジネスも始まりと終わりがあり、始まりは静かに始まり、急激に成長し、社会に浸透し、社会から消えていきます。
ハイプサイクル(特定の技術の成熟度、採用度、社会への適用度を示す図)で簡単に見ることができます。
3C分析
3C分析とは、Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の頭文字を取ったもので、課題の抽出や戦略策定を考える際に使用するフレームワークです。
自社分析は後述の内部環境分析と重複するため割愛します。
市場分析では、主に市場規模、顧客種別(法人や個人)、顧客の規模感などを確認します
競合分析では、競合の数、狙うターゲット層、差別化の容易さ、などを確認します。
内部環境分析・企業分析4選
外部環境分析では、伸びる市場・収益性のある市場を確認してきました。
本章では、魅力ある市場の中で勝てる企業か、将来も勝ち続けられる企業かを判断していきます。
SWOT分析・クロスSWOT分析
SWOT分析とは、の頭文字を取ったもので、業界全体に起きる事柄を機会か脅威に分けて、強みと弱みを把握するためのフレームワークです。
一般的にSWOT分析は状況整理だけで終わってしまうことが多いため、クロスSWOT分析という形で、意味を抽出していきます。
クロスSWOT分析では、4つの観点から整理したものをそれぞれ掛け合わせて、4象限に分けて、打ち手までを対策する手法になります。
アンゾフの成長マトリクス
成長マトリックスは、経営戦略の方向性を市場の切り替え、製品の切り替えという観点から整理するフレームワークです。
基本は、製品か顧客基盤のどちらかの軸足を残して、展開していきます。
IR発表などで「多角化」の発表があった際は、シナジーと呼ばれる相乗効果があるのかどうか確認しましょう。
- 収益シナジー
- コストシナジー
- 財務シナジー
- 信用力シナジー
- 無形資産の融合シナジー
シナジー:お互いが補完し合って 1 + 1 が2以上の効果になること。
VRIO分析
VRIO分析は、「V:Value(経済的な価値)」、「R:Rareness(希少性)」 、「I:Imitability(模倣可能性)」、「O:Organization(組織)」の4つの頭文字を取ったもので、競争優位性につながる経営資源について把握するフレームワークです。
「V」⇒「R」⇒「I」⇒「O」の順で見ていきます
- V:Value(経済的な価値) |経済的な価値をもたらすか?
- 企業が直面する外部環境における脅威や機会に対して、保有する経営資源を使って適応できるか?
- R:Rareness(希少性) |誰にでも手に入るものか?
- その経営資源を使えるのは、ごく限られた企業のみか?
- I:Imitability(模倣可能性)|今持っていなくても、開発して追いつけるか?
- その経営資源を持っていない企業が、先行している企業が持つ経営資源に追いつくために、時間やコストが膨大にかかるか?
- O:Organization(組織)|経営資源の利用が組織の骨の髄まで浸透しているか?
- 上記V + R + I の要素を満たす経営資源を利用するために、組織的なマニュアル化までされているか?
成長株を見つける上では、下記の観点から見ると良いでしょう。(例)
財務分析
財務分析は、まとまったフレームワークではないですが、成長性、収益性、効率性、安全性、総合力の5つを確認していきます。
過去と比較する際、競合他社と比較する際に有効です。
成長性とは、売上高成長率、総資産成長率、営業利益成長率、EPS成長率
収益性とは、営業利益率、当期純利益率
効率性とは、総資産回転率、棚卸資産回転率、
安全性とは、流動比率、当座比率、自己資本比率、有利子負債比率
総合力とは、ROA(総資産経常利益率)、ROE(自己資本当期純利益率)
特にROAとROEはデュポンシステムという手法で細分化すると把握しやすくなります。
ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本 = 売上高純利益率 × 総資本回転率 × 財務レバレッジ
まとめ
ポイント
- フレームワークは先人の知恵が詰まっており、株式投資においても非常に有益
- 企業の株価が上げるためには「業界が伸びる」「業界シェアが広がる」「収益の上がる体質になる」のいづれか、もしくは全てが必要がある
- 外部環境分析と内部環境分析を駆使して成功確度の高い企業を特定できる