株式投資を始めると、「どの株が割安で、どの株が割高か」を判断するのが難しく感じるかもしれません。
利益が出ている企業なら、株価収益率(PER)などで評価できそうですが、利益が出ていない成長企業やスタートアップをどう評価するかは、多くの投資家が直面する課題です。
そんな時に活用できるのが、「PSR(株価売上高倍率)」という指標です。
PSRは、企業の売上高を基準に株価の評価を行うため、利益が出ていない企業でも、その成長性や将来の見通しを反映して評価することが可能です!
この記事では、PSRの基本的な使い方から、具体的な割安株の見つけ方、そして他の指標との比較までを詳しく解説します。
これを読めば、PSRを活用した投資戦略をすぐに実践できるようになるでしょう!
この記事はこんな人向け
- 割安株を見つけたい投資初心者
- PSRの使い方を学びたい中級者投資家
- ファンダメンタルズ分析に興味がある投資家
本記事に書かれていること
- PSR(株価売上高倍率)とは何か
- PSRを使った割安株の見つけ方
- PSRと他の指標との違い
最終的な判断は自己責任でお願いします。株式投資は、さまざまなリスクを正しく認識したうえで、自分自身の判断と責任に基づいて行ってください。
執筆者情報
- 名前: おみくん
- 投資歴: 11年、損益レシオは2.57以上を維持。主にオニール流成長株投資を実践
- 学習量: 投資関連本200冊以上読破
- 資格・学位: 中小企業診断士(29歳で資格合格)、経営学修士(MBA、28歳で修了)、2級FP技能士
PSRとは?株価売上高倍率の基礎知識
PSR(Price to Sales Ratio)は、企業の売上高と株価を比較することで、株価が売上高に対してどの程度の評価を受けているのかを示す指標です。
この指標は特に利益がまだ出ていない企業や、新興市場に上場して間もない企業の評価に役立つことが特徴です。
計算式は次のとおりです。
PSR = 時価総額 ÷ 売上高
例えば、ある企業の時価総額が100億円で、年間売上高が50億円だった場合、PSRは「2」になります。
これは、投資家が企業の1円の売上に対して2円の価値をつけていることを意味します。
PSRの計算式を深掘り
PSRの計算における「時価総額」は、企業が市場で評価されている価値です。
これは、全発行済株式数に現在の株価を掛け合わせることで算出されます。
一方、「売上高」は、企業が1年間に生み出した総収益を指します。
このPSRを使うことで、特にスタートアップや高成長企業に対して、利益が出る前の段階でも企業の成長性を測ることができます。
例えば、利益がまだ出ていないテクノロジー企業であっても、売上高が堅調に成長していれば、PSRを使って将来の成長を反映した評価が可能です。
PSRは、以下のような企業に特に効果的です。
- SaaS企業(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)
- バイオテクノロジー企業
- テクノロジー企業
これらの企業は、利益を出す前に大きな市場シェアを獲得しようとするケースが多いため、売上高の成長率を重視するのが一般的です。
この成長性を評価するためにPSRが適しているのです。
PSRと他の指標の違い
PSRと他のファンダメンタルズ指標(例えばPERやPBR)との違いを理解することで、より的確に株価を評価できます。
では、それぞれの指標が何を重視しているのかを見ていきましょう。
PER(株価収益率)との違い
PER(Price to Earnings Ratio)は、企業の利益に基づいた評価です。
株価が1株当たりの利益(EPS)に対して何倍の価格で取引されているかを示します。
PERは利益に基づくため、すでに利益を出している企業に対して効果的な指標です。
PER = 株価 ÷ 1株当たり利益(EPS)
一方、PSRは売上高に基づいており、利益をまだ出していない企業でも評価できるというメリットがあります。
これは特に、赤字の成長企業や事業拡大を続けるスタートアップに適しています。
PBR(株価純資産倍率)との違い
PBR(Price to Book Ratio)は、企業の純資産に対して株価が何倍で取引されているかを示す指標です。
これは、企業の財務的な健全性や資産の価値を評価するために使われます。
PBRが1未満の場合、企業の株価がその純資産よりも低く評価されていることを意味し、割安と見なされることが多いです。
PBR = 株価 ÷ 1株当たり純資産
PBRは、主に成熟した企業や資産が多い企業に有効な指標です。
しかし、スタートアップや成長企業の場合、純資産が少ないため、PBRでは正しく評価できないことがあります。
ここでPSRが役立ち、売上高を基準にした評価が可能になります。
PSRを使った割安株の見つけ方
PSRを使うと、どのように割安株を見つけられるのでしょうか?
ここでは、PSRを活用して割安株を発見する具体的な手法を解説します。
低PSRが示す割安株
一般的に、PSRが低い企業は株価が売上高に対して控えめに評価されていることを示します。
特に、PSRが1以下の企業は、売上高に対して割安と考えられることが多く、投資チャンスがあるかもしれません。
しかし、注意すべき点は、PSRが低すぎる場合、単純に企業の成長が鈍化している、もしくは市場がその企業の未来に対して悲観的であることを意味する場合もあるということです。
したがって、PSRが低いからといって必ずしも良い投資対象とは限らず、他の指標や業界全体のPSR平均と比較して判断する必要があります。
業界ごとのPSR平均値を活用する
業界によって適正なPSRの水準は大きく異なります。
テクノロジーやバイオテクノロジーなどの高成長が期待される業界では、PSRが3〜5でも割安と見なされる場合がありますが、製造業やサービス業などの成熟産業では、PSRが1〜2程度が妥当とされます。
したがって、単に「PSRが低いか高いか」ではなく、その企業が属する業界全体のPSR平均と比較し、適正かどうかを見極めることが重要です。
例えば、あるテクノロジー企業がPSR3であったとしても、業界全体の平均が5であれば、その企業は割安と見なすことができるでしょう。
業界別に見るPSRの適正値
PSRの基準は、業界ごとに異なります。
成長性の高い業界と成熟した業界では、同じPSR値でも割安・割高の基準が異なることを理解しておくことが大切です。
テクノロジー業界
テクノロジー業界は、急成長が期待される企業が多いため、PSRが3以上であっても割高と見なされることは少ないです。
特に、クラウドサービスやAI技術、バイオテクノロジーなど、将来の市場拡大が見込まれる企業には、投資家が大きな期待を込めて高いPSRを容認する傾向があります。
例えば、あるフィンテック企業のPSRが6であったとしても、同業他社のPSRが7〜10であれば、その企業はまだ成長余地があると見なされる可能性があります。
製造業
製造業では、安定した売上と利益を期待されるため、PSRが1〜2程度が適正とされています。
例えば、自動車メーカーや電機メーカーなど、安定した収益を上げる成熟した企業では、PSRが高すぎると過剰な期待が込められている可能性が高いです。
特に、製造業では利益率が重要なため、PSRが高すぎる場合は、成長期待が実現できないリスクも考慮しなければなりません。
PSRのメリットと限界
PSRを効果的に活用するためには、そのメリットと限界を正しく理解しておくことが重要です。
PSRのメリット
- 利益が出ていない企業でも評価できる
PSRは、利益がまだ出ていない企業でも、売上高を基準に評価できる点が最大のメリットです。
スタートアップや新興企業、特にテクノロジー企業では、利益を出す前に大規模な投資を行うことが多いため、利益ベースの指標では評価が難しいことが多々あります。
ここでPSRを使うと、売上高の成長力を評価できます。
- 業界の成長を反映した評価ができる
成長産業では、売上高の増加が企業の成長力を示す重要な要素です。
PSRを使うことで、業界全体の成長や市場の拡大に対して適正な評価ができるため、将来性のある企業を早い段階で見つけることができます。
PSRの限界
- 利益やキャッシュフローを考慮しない
PSRは売上高のみを基準にしているため、利益やキャッシュフローが無視されるリスクがあります。
企業がどれだけの利益を出しているか、またはキャッシュフローを生み出しているかを考慮しないと、実際の成長力や持続可能性を見落とす可能性があります。
特に利益率が低い企業では、売上が増えていても最終的に利益を出せないケースもあるので注意が必要です。
- 業界平均の比較が必要
PSRは単独で使うよりも、業界全体のPSR平均と比較して使うことが推奨されます。
業界ごとに基準値が異なるため、業界平均を知らずにPSRだけで割安・割高を判断するのは危険です。
たとえば、PSRが3でも、ある業界では適正水準であり、他の業界では割高と見なされることもあります。
どんなときにPSRを使うべきか?効果的なシチュエーション
PSRは特定のシチュエーションで非常に有効です。
ここでは、PSRが特に役立つケースを具体的に紹介します。
利益が出ていない成長企業の評価
スタートアップ企業や成長企業は、利益を出す前に市場拡大に大規模な投資を行うことが多いです。
こうした企業は利益を基にしたPERでは評価が難しいため、PSRが適していると言えます。
業界の成長トレンドに乗った企業を見つける
特に、テクノロジー分野やフィンテック業界など、成長が著しい分野では、業界全体の成長トレンドに乗った企業を早期に見つけるためにPSRが有効です。
売上が急成長している企業をPSRで評価し、その後の市場動向に合わせた投資判断が可能です。
割安株を見つけた後に取るべきアクション
PSRを使って割安株を見つけた後にすべきことは、リスク管理とポートフォリオの最適化です。
ポートフォリオの分散
割安株を見つけたら、それをポートフォリオに組み込む際、他の銘柄とのバランスを考えます。
一銘柄に過度に集中するとリスクが高まるため、複数の銘柄に分散させることが重要です。
また、異なる業界や地域に投資を分散することで、リスクをさらに低減できます。
PSRに加えて確認すべきファンダメンタル指標
PSRは重要な指標ですが、他のファンダメンタル指標も併せて確認することで、より正確な投資判断が可能です。
ROE(自己資本利益率)
ROE(Return on Equity)は、企業がどれだけ効率的に自己資本を使って利益を上げているかを示す指標です。
PSRが低い企業でも、ROEが高ければ、その企業は資本を効果的に使って利益を上げていると評価できます。
フリーキャッシュフロー
フリーキャッシュフローは、企業が生み出す実際のキャッシュ(現金)の量を示す指標です。
PSRが低くても、フリーキャッシュフローがマイナスであれば、その企業は売上を拡大していても持続的に利益を生む力が不足している可能性があります。
まとめ
PSRは、特に成長企業や利益がまだ出ていない企業に対して、売上高を基準に割安株を見つけるための有力な指標です。
PSRを使えば、将来的な成長を見込んだ投資判断が可能になります。
ただし、PSRだけに頼らず、他の指標や業界全体のトレンドも併せて確認することで、より安全で効果的な投資が実現できるでしょう。
この記事を参考に、PSRを使って割安株を見つけ、長期的な投資戦略に役立ててください!